
肉離れリハ、2024年最新研究では見えない3つの落とし穴
目次
こんにちは! yell鍼灸治療院の斉藤です!
今回は、肉離れのリハビリで 2024年の最新研究にも見えていない「3つの落とし穴」 について書いていきたいと思います!
最新の論文を読むと、つい「これが正解なんだ」と思ってしまいます。
でも、どんなにいい研究にも「まだ分かっていない部分」が残ります。
そして、その「分かっていない部分」こそが、リハビリで気をつけたい落とし穴だったりします。

「最新研究を読んでも分からないこと」がある
2024年に発表されたハムストリング肉離れの研究は、33例の患者さんを丁寧に追いかけた、とても貴重な国内データです。
復帰までの日数、筋力、柔軟性 ── これらが損傷型別に細かく報告されています。
ただ、論文の最後には著者自身がこう書いています。
「本研究の限界として以下のものが挙げられる」
そう、研究の 「ここまでしか言えない」 が、論文の最後に正直に書かれているわけです。
ここを読まずに数字だけ使うと、リハビリの方向を見誤ることがあります。
論文が示す「3つの落とし穴」
論文の著者自身が挙げている 3つの限界 を、ひとつずつ見ていきましょう。
落とし穴①:重症度の違いが論文では区別されていない
ひとつ目の落とし穴は「重症度の混在」です。
肉離れには、損傷の 重さの程度 があります。
一般的には1度・2度・3度の3段階で分けられています。
- 1度:軽い損傷・部分的な筋線維の傷
- 2度:中等度の損傷・筋線維のはっきりした断裂
- 3度:完全断裂・手術が必要なレベル
実は、論文の33例の中には、この重症度がバラバラに混ざっています。
ⅠTYPE 11例の中身を見ると、1度が7例・2度が4例。
Ⅱ型22例の中身を見ると、1度が13例・2度が8例・3度が1例。
論文の著者も、こう正直に書いています。
「対象者の群分けを損傷型のみで行っており、重症度は考慮していない」
つまり、「Ⅰ型の平均日数」と言っても、その中には1度の人も2度の人も混ざっている ということ。
「Ⅰ型は29日で戻れる」と単純に受け取ると、自分が2度の損傷だったら同じペースでは戻れない可能性 が出てきます。
リハビリの進め方は、損傷型だけでなく 自分の重症度 も合わせて判断する必要があるわけです。

落とし穴②:遠心性収縮の機能は測られていない
ふたつ目の落とし穴は「遠心性収縮の評価がない」です。
肉離れが起きる瞬間、筋肉はどんな動きをしているか、ご存知でしょうか。
実は、伸ばされながら力を出している状態 で起きることがほとんどです。
これを 遠心性収縮(エキセントリック収縮)といいます。
走っているときに足を前に振り出す瞬間、ハムストリングは伸びながらブレーキをかけます。
このとき一気に大きな力がかかり、筋繊維が「ぷちっ」と切れる ── これが肉離れの典型パターンです。
つまり、復帰の判断で本当に確かめたいのは「遠心性収縮の力が戻っているか」のはず。
ところが、論文の筋力測定はすべて 等速性収縮(一定の速度で動かす機械的測定)で行われています。
論文の著者もこう書いています。
「筋力測定は等速性筋力にて測定しており肉離れの受傷機転である遠心性収縮の評価が行えていない」
簡単に言うと、「受傷した動き方そのもので、戻ったかは確かめられていない」 ということ。
復帰時の数字が回復していても、実際に走った瞬間に再び肉離れが起きるリスクは、論文の数字では見えないのです。
落とし穴③:傷ついた筋肉が「どの筋肉か」で違うかもしれない
3つ目の落とし穴は「受傷筋別の検討がない」です。
ハムストリングは1本の筋肉ではなく、3つの筋肉の集まり です。
- 大腿二頭筋(だいたいにとうきん)
- 半膜様筋(はんまくようきん)
- 半腱様筋(はんけんようきん)
論文の33例では、最も多かったのは 大腿二頭筋の損傷。
ただ、損傷した筋肉の違いで回復ペースが変わる可能性は、まだ十分に検討されていません。
論文の著者もこう書いています。
「損傷筋別に検討していない」
「ハムストリングの肉離れ」とひとくくりにされていても、どの筋肉が傷ついたか で復帰の感じ方は変わる可能性があります。
4フェーズのリハが「落とし穴」を埋める設計
「じゃあ、論文の数字を頼りにできないなら、何を頼りにすればいいの?」
実は、論文の中に 「落とし穴を埋めるための設計」 がしっかり書かれています。
それが 4つのフェーズに分けたリハビリプロトコル です。
| フェーズ | 時期(Ⅰ型 / Ⅱ型) | 主な内容 |
|---|---|---|
| ① 患部保護期 | 〜1週 / 〜1週 | RICE処置・安静 |
| ② 身体機能回復期 | 2週〜 / 2〜3週〜 | 圧迫操作・静的ストレッチ・等尺性収縮 |
| ③ 運動機能回復期 | 3週〜 / 4週〜 | 動的ストレッチ・ジョグ〜ランニング・求心性収縮 |
| ④ 特異性回復期 | 4週〜 / 5〜6週〜 | アジリティ・ダッシュ・ジャンプ・遠心性収縮 |
ポイントは、遠心性収縮のトレーニングを最終段階に置いていること。
論文では確かに遠心性収縮の力は測定できていません。
ですが、リハビリの段階としては「最後にしっかり鍛える」ことが組み込まれているわけです。
数字で見えない部分を、段階を踏むことで安全に埋めていく ── これが論文のリハ設計の核です。

33例で再損傷ゼロを実現した「焦らない設計」
論文には、もうひとつ大切な記述があります。
「本研究対象者において、リハビリテーション経過中に再損傷例はいなかった。また競技復帰後に再損傷により受診した者はいなかった」
つまり、33例全員が再損傷なしで競技復帰できた ということ。
ハムストリング肉離れの再発率は、別の研究では 約1/3 と報告されています。
再損傷ゼロという結果は、かなり優秀な数字です。
なぜこの結果を出せたのか。
著者は 「段階的リハビリと、復帰判定基準を満たしてからの復帰」 だと考察しています。
3つの落とし穴は、論文の数字には見えません。
でも、4フェーズを 飛ばさない・焦らない ことで、見えない部分を実質的に埋められる、という設計思想です。

鍼灸ができる「論文の手の届かない場所」へのサポート
リハビリの4フェーズを進める中で、鍼灸はどう関わっていけるのか。
論文には鍼灸の話は書かれていません。
それは、論文の 手の届かない場所 だからです。
鍼灸ができるサポートを、フェーズごとに考えてみると、こんなイメージです。
- フェーズ②(身体機能回復期):筋肉の滑走性を整えるアプローチで、ストレッチが進めやすい状態をつくる
- フェーズ③(運動機能回復期):周辺の筋緊張を和らげるアプローチで、ランニング動作のスムーズさをサポート
- フェーズ④(特異性回復期):疲労が溜まりやすい時期の コンディション維持 をサポート
繰り返しになりますが、回復するのはご自身の身体の力 です。
鍼灸はその回復力が発揮されやすい状態を整える、というポジション。
医師や理学療法士の方が立てたリハ計画と並走する形で、補助的に使っていただくのが理想だと考えています!

まとめ
ここまで読んでくださってありがとうございます!
今回のポイントをまとめます。
- 2024年最新研究にも「3つの落とし穴」がある:①重症度の混在 ②遠心性収縮の評価なし ③受傷筋別の検討なし
- 論文の数字だけで復帰を判断しない:自分の重症度・受傷の動きパターンを合わせて見る
- 4フェーズのリハ(患部保護期→身体機能回復期→運動機能回復期→特異性回復期)が落とし穴を埋める設計
- 段階を 飛ばさない・焦らない ことで、33例中ゼロの再損傷率を実現できた論文の事実がある
- 鍼灸は 論文の手の届かない場所 で、各フェーズのリハをサポートする補助的なポジション
最新研究を信じることは大事ですが、「見えていない部分」も含めて読むこと が、もっと大事だと感じています。
「自分のリハ、このペースで本当に大丈夫かな?」と感じられたら、公式LINE からお気軽にご相談ください。
立川駅・立川南駅からアクセスしやすい場所にあります。
yell鍼灸治療院は、あなたの健康と笑顔とハッピーを超応援します!
参考文献
- 三宅秀俊ほか「ハムストリング肉離れからのスポーツ復帰時の身体機能―損傷型による比較―」日本臨床スポーツ医学会誌 Vol.32 No.1, 2024, pp.85-90.




