
肉離れの復帰、筋力と柔軟性は戻る?数字で見る判定
目次
こんにちは! yell鍼灸治療院の斉藤です!
今回は、肉離れから復帰するとき、筋力と柔軟性は本当に戻っているのか というテーマで書いていきたいと思います!
「もう痛くないし、そろそろ走っていいかな?」
肉離れのリハビリ中、誰もが一度は思う瞬間です。
でも、「痛くない」と「戻っている」は別もの。
今日は、その「戻っているか」を数字で確かめる話をします。
復帰の合格ラインは「3つの条件」
スポーツ復帰の目安として、よく挙げられる3つの条件があります。
- ① 痛みがないこと
- ② 伸張性(柔らかさ)に左右差がないこと
- ③ 筋力が回復していること
①の「痛みがない」は、わりと分かりやすい。
問題は、②の柔軟性と③の筋力です。
これは 感覚ではなく、数字で測らないと分からない 部分なんです。

「等速性筋力測定」って何を測っているの?
③の筋力を測るとき、研究でよく使われるのが 等速性筋力測定 という方法です。
簡単に言うと、専用の機械を使って、一定の速度で膝を曲げ伸ばししながら、出せる力を測る テスト。
速い動き(毎秒180度)とゆっくりの動き(毎秒60度)の2パターンで測ります。
速さによって筋肉の力の出方は変わるので、2つの速度で測ることで、より多面的に「戻り具合」を確かめられます。
そして大事なのが 患健比 という考え方。
これは「ケガをした側の力 ÷ 健康な側の力」の割合のこと。
100に近いほど、左右差なく戻っている という意味になります。
たとえば患健比が70なら、ケガ側はまだ健側の7割の力しか出せていない、ということ。
見た目では分からない「あと3割の戻り残し」を、数字があぶり出してくれます。
「なんとなく動ける」と「数字で戻っている」の間には、それくらいの差があるんです。

「SLR」と「AKET」という2つの柔軟性チェック
②の柔軟性は、2つのテストで測られます。
ひとつは「他の人に動かしてもらう柔らかさ」、もうひとつは「自分で動かす柔らかさ」。
この2つは似ているようで、別の能力なんです。
SLR(下肢伸展挙上テスト)
あおむけで、膝を伸ばしたまま足を持ち上げてもらうテスト。
他の人に動かしてもらう(他動的な)柔らかさ を見ます。
AKET(自動膝伸展テスト)
股関節を曲げた状態から、自分の力で膝を伸ばしていくテスト。
自分で動かす(自動的な)柔らかさ を見ます。
どちらも、左右の差が小さいほど、柔軟性が戻っているサインです。

なぜ「感覚」だけではダメなのか
「もう痛くないから大丈夫」── これが、実は一番危ないと私は思っています!
痛みは、筋力や柔軟性より 先に消えてしまう ことがあるからです。
先行研究では、筋力はプレー復帰後もまだ低下していた という報告や、柔軟性(SLR)の回復には20〜50日かかるという報告があります。
痛みが消えても、力や柔らかさは「まだ戻りきっていない」ことがある。
その見えないギャップが、再発の入り口になります。
だからこそ、感覚ではなく数字で確かめる意味があるんです。
2024年の研究が示した「意外な事実」
ここからが本題です。
2024年の日本の研究(33例のハムストリング肉離れ)が、こんな結果を出しています。
肉離れには2つのタイプ(筋線維型・腱膜型)があるのですが、復帰までの「期間」はタイプで違いました。
ところが、復帰した時点での 筋力と柔軟性は、タイプに関係なく戻っていた んです。
具体的な数字を見てみましょう。
| 測定項目 | I型(筋線維型) | II型(腱膜型) |
|---|---|---|
| 膝屈曲筋力 患健比(毎秒180度) | 101.1 | 93.7 |
| 膝屈曲筋力 患健比(毎秒60度) | 102.5 | 95.5 |
| SLRの左右差 | 0度 | 5度 |
筋力はどちらも 健側とほぼ同じ水準 まで回復。
柔軟性の左右差もごくわずか。
統計的にも、2つのタイプの間に 有意差はありませんでした。
言いかえると、「腱膜型だから筋力が戻りにくい」「筋線維型だから柔らかさが劣る」といった差は、復帰の時点では見られなかった、ということ。
タイプによる得意・不得意ではなく、きちんとリハビリを積めたか が、機能の戻りを決めていた可能性があります。

「時間」は違っても「ゴールの質」は同じ
この研究が教えてくれるのは、こういうことです。
ゴールにたどり着く「時間」はタイプで違う。でも、ゴールでの「コンディション」は同じ。
論文の結語にも、こうあります。
「復帰期間は損傷型により異なるが、筋力・柔軟性は損傷型に関係なく改善していた」
そしてこの研究、33例全員が再損傷なしで復帰 しています。
段階的なリハビリで、しっかり数字を確かめてから復帰したから、という考察です。
リハビリ中の方にとって、これは励みになる事実だと思います。
「自分は治りの遅いタイプかも」と落ち込む必要はない。
時間の差はあっても、段階を踏めば、機能は同じゴールまで戻せる可能性がある。
大切なのはタイプを気にすることより、数字で「戻ったか」を確かめながら進めることです。
焦る気持ちも、数字で「ここまで戻った」と分かると、少し落ち着くものです。
yellができること
鍼灸は、この復帰の道のりにどう関われるのか。
私のスタンスは、主役はあくまでリハビリと、ご自身の回復力 だということ。
その上で、こわばった筋肉を整え、血流が促されやすい身体の状態に近づけるアプローチで、リハビリが進めやすい土台をサポートする。
そして、「焦らず、数字で確かめながら」をご一緒に大切にしていく。
医師や理学療法士の方が立てた計画と並走する形で、補助的に使っていただくのが理想だと考えています!
まとめ
ここまで読んでくださってありがとうございます!
今回のポイントをまとめます。
- 復帰の目安は ①痛みなし ②柔軟性の左右差なし ③筋力の回復 の3条件
- 筋力は 等速性筋力測定(患健比=ケガ側÷健側)で数字にする
- 柔軟性は SLR(他動)とAKET(自動) の2つのテストで左右差を見る
- 痛みは先に消えるので、感覚ではなく数字で確かめる ことが再発予防につながる
- 2024年の研究では 復帰期間はタイプで違うが、筋力・柔軟性はタイプ非依存で回復
「自分のリハビリ、ちゃんと戻っているか不安だな」と感じられたら、公式LINE からお気軽にどうぞ。
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参考文献
- 三宅秀俊ほか「ハムストリング肉離れからのスポーツ復帰時の身体機能―損傷型による比較―」日本臨床スポーツ医学会誌 Vol.32 No.1, 2024, pp.85-90.




