
アスリートはなぜ鍼を選ぶ?211症例レビューの実態
目次
こんにちは! yell鍼灸治療院の斉藤です!
今回は、スポーツ選手が鍼治療を選ぶ理由 について書いていきたいと思います!
「トップ選手って、ケガをしたとき何をしているんだろう?」と気になったことはありませんか。
2020年に韓国の研究チームが、アスリートへの鍼治療の症例を世界中から集めて分析した、大きなレビューを発表しています。
その中身を、今日はかみくだいてご紹介します。
211人のアスリート、22の報告を集めたレビュー
2020年のレビュー(韓国・嘉泉大学+韓国韓医学研究院)は、世界中から集めた 22件の症例報告 を分析したものです。
対象になったアスリートは、合計 211人。
男性が119人(56.4%)、年齢は8歳から77歳まで(平均24.8歳)と、とても幅広い層が含まれています。
報告は1980年から2019年まで、アメリカを中心に8カ国から集められました。
つまり「特定の国・特定の競技だけの話」ではなく、世界の幅広いスポーツ現場で鍼が使われてきた ことが分かる内容です。

どんなケガに使われていたのか
211例のうち、最も多かったのは 筋肉・腱・関節まわりのトラブル(98例)でした。
傷ついた部位を見ると、こんな並びになります。
- 膝(内側側副靱帯の損傷・ジャンパー膝・半月板損傷)
- 肘(テニス肘などの腱の炎症)
- 肩(痛み・腱板の損傷)
さらに、運動後の筋肉痛(DOMS)は57例、運動による疲労は41例と、まとまった数のアスリートで使われていました。
ゴルファーのイップスやスポーツヘルニアなど、「決め手がない」とされる症状 にも試されています。
「鍼は肩こり・腰痛のイメージ」という方も多いですが、スポーツの現場では、ずっと幅広く使われているんですね。

鍼で報告された変化
このレビューがまとめた、鍼治療で報告された主な変化は、こうまとめられます。
「鍼治療は短期的な痛みの軽減と、機能の回復に役立つ可能性がある」
特に、側副靱帯の損傷・スポーツヘルニア・足のガングリオンなど、手術以外の保存的なケア として役立ったと報告されています。
電気を流すタイプの鍼は、股関節の挟み込み(インピンジメント)や半月板損傷に対して、保存的な選択肢として推奨されていました。
ちなみに使われた鍼の種類もさまざまで、手で操作する鍼、電気を流す鍼、コリの芯をねらう鍼などが、症状に合わせて使い分けられていました。
ただ、ここで大事な注意点があります。

鍼は「痛み止め」だけではない
このレビューが面白いのは、鍼の役割が「痛みを抑えること」だけにとどまらなかった 点です。
側副靱帯の損傷やスポーツヘルニアのように、本来は手術や安静が中心になりがちな症状に対しても、保存的なケアの一手として使われていました。
著者も「筋骨格系の痛みのコントロールを超えた可能性が見られた」とまとめています。
もちろん万能ではありませんが、「痛みを散らすだけの道具」ではない、という視点は新鮮でした。
では、なぜアスリートは鍼を選ぶのか
ここまで読んで、「結局、なぜ選ばれているの?」と思われたかもしれません。
レビューから読み取れる理由は、大きく3つあります。
ひとつ目は、身体への負担が少ないこと。
手術のように切るわけではなく、薬のように飲み続けるわけでもない。
身体を大きく傷つけない、保存的なアプローチとして選ばれていました。
ふたつ目は、シーズン中でも続けやすいこと。
アスリートは「練習を完全に止める」という選択がしにくい立場です。
リハビリと並行できる点が、現場のニーズに合っていました。
3つ目は、手詰まりの症状にも試せること。
イップスやDOMSなど、「これといった決め手がない」とされる症状にも、試す価値のある選択肢として挙げられていました。
つまり鍼は、「手術ほど大がかりではない。でも、何かしたい」 という現場の願いに応える位置づけだったわけです。
「症例報告」という証拠の弱さも正直に
ここで、このレビューの誠実さに触れておきたいと思います。
著者自身が、こう書いているんです。
「本レビューは症例報告に基づくため、アスリートにおける鍼治療の臨床的価値の理解は限定的である」
簡単に言うと、症例報告は「うまくいった1例の記録」 であって、比較試験(RCT)のような強い証拠ではない、ということ。
22件のうち、再発まで追えたのは7件だけ。
そのうち1件では、22人中6人が復帰後10日〜2ヶ月で再発したとも、正直に報告されています。
「鍼はすごい!」と煽るのではなく、「可能性はある。でも、もっと研究が必要」 と冷静に締めくくる。
私は、こういう正直で誠実な論文がとても好きです!
yellが大切にしていること
スポーツでのケガに対して、鍼灸はどう関わっていけるのか。
私の考えはシンプルです。
鍼は魔法ではないけれど、選択肢のひとつとして十分に価値がある。
このレビューが示してくれたのは、世界中のアスリートが、手術や薬だけでなく、身体に負担の少ない保存的なケアとして鍼を選んできた事実です。
痛みのコントロールや、こわばった筋肉を整えるアプローチを通じて、回復しやすい身体の状態に近づけるサポート。
それが鍼灸のポジションだと考えています。
「やれることは全部やりたい」というアスリートの気持ちに、もう一つ選択肢を差し出せたら嬉しいです。
私自身もトライアスロンをやるので、「練習を止めたくない、でも無理もしたくない」というジレンマは、痛いほど分かります、、涙
一緒に前に進んでいきましょう!
まとめ
ここまで読んでくださってありがとうございます!
今回のポイントをまとめます。
- 2020年のレビューは、世界8カ国・22報告・211人のアスリート の鍼治療をまとめたもの
- 最も多かったのは膝・肘・肩など 筋肉/腱/関節のトラブル(98例)
- 鍼は 短期的な痛みの軽減と機能の回復 に役立つ可能性が報告された
- 選ばれる理由は 身体への負担が少ない・シーズン中も続けやすい・手詰まりにも試せる
- ただし症例報告ベースで 証拠としては限定的 — 著者も正直に認めている
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参考文献
- Lee J-W, Lee J-H, Kim S-Y. "Use of Acupuncture for the Treatment of Sports-Related Injuries in Athletes: A Systematic Review of Case Reports." International Journal of Environmental Research and Public Health 2020; 17(21): 8226.




