デッドリフト挙上シルエット+心電図オーバーレイの逆光構図。立川のyell鍼灸治療院が『デッド中に身体で起きている10数秒』を解説する記事のアイキャッチ画像

デッド中に身体で起きている10数秒|心拍と食いしばりの科学

スポーツ
目次
  1. デッド中に「頭がクラっとする」経験ありませんか?
  2. 10名の研究が心電図で見た10数秒
  3. +5kgで心拍が有意に上がる|無呼吸戦いの正体
  4. 食いしばりで疲労が変わる|咬合の科学
  5. 今日から使える呼吸と食いしばりの整え方
  6. まとめ
  7. 📚 参考文献

こんにちは! yell鍼灸治療院の斉藤です!
今回は、デッドリフト挙上中に身体の中で起きている、10数秒の反応について書いていきたいと思います!

デッド中に「頭がクラっとする」経験ありませんか?

「デッドの高重量で、上げた後に頭がクラっとする」
「最後の1レップで息が止まって、耳鳴りがする」
そんな経験、、思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この現象、実は身体の中で起きている自律神経の反応で説明できます!

10名の研究が心電図で見た10数秒

2021年に「昭和学士会誌」に掲載された論文(蜂須 2021)が、デッドリフトの挙上中に、心電図を測って身体の反応を調べてくれています。

被験者は、ウェイトトレーニングを日常的にしている男性 10名。
(平均年齢30.0±15.0歳・最大挙上重量の平均は 173.0kg)
まさに、パワーリフターに近いレベルの経験者ですね。

方法は、90%1RM(最大挙上重量の9割)を基準に、-5kg・±0kg・+5kg の3条件で挙上してもらう。
そして、その挙上中と前後の心電図から、「きりつ名人」という自律神経活動解析装置で、交感神経と副交感神経の動きを追いかけました。

さらに面白いのが、カスタムメイドマウスガード(CMG) の装着効果も同時に測っている点。
装着なし・2mm・4mm の3種類で比較して、「食いしばりの厚みが、身体の疲労にどう影響するか」まで探る、というかなり細かい設計の研究でした!

デッドリフト10数秒の身体反応タイムライン(挙上開始→無呼吸→乳酸産生→ケモレセプター刺激→交感神経活性化・心拍上昇)を示す診察机の書類風ポスター。立川のyell鍼灸治療院・出典蜂須 2021より

+5kgで心拍が有意に上がる|無呼吸戦いの正体

まずわかったのは、こんなことです。

90%1RM の -5kg → +0kg → +5kg と重量を上げていくと、+5kg 条件で心拍が有意に上昇した(p=0.039)。

たった 5kg の違いで、身体の反応が数字ではっきり変わるレベルにまで届く、ということですね。

なぜ、こんな短時間で心拍が跳ね上がるのか?
論文の考察では、こう説明されています。

デッドの1レップは、実は10数秒の無呼吸
息を止めて挙げる間、身体は無酸素運動状態になり、クレアチンリン酸が消費されて 乳酸が産生されます
その乳酸が化学受容器(ケモレセプター)を刺激して、交感神経が急激に活性化。
結果として、心拍数がドンと跳ね上がる、という流れです。

「頭がクラっとする」経験は、この10数秒間で身体が全力で走った後のような状態になっている、というわけですね!

食いしばりで疲労が変わる|咬合の科学

そしてこの論文で興味深いのが、マウスガードを装着することで、疲労の指標に変化が出たという結果でした。

順番に見ていきます。

咬筋→H反射→ヒラメ筋・前脛骨筋の促通

咬筋(噛みしめる時に働く顎の筋)が働くと、その情報が神経を通じて、脊髄の反射(H反射)を高めることが知られています。
このH反射が高まると、ふくらはぎ側のヒラメ筋や、すね側の前脛骨筋という、下肢の姿勢を保つ筋の働きが強くなります。

食いしばることで、下半身がキュッと固まって、バーベルの力を身体に伝えやすくなるという仕組みが働いてくれます!

マウスガードで疲労軽減の傾向(CMG 4mm)

論文の結果では、CMG 4mm を装着した時に、立位継続時の ccvHF(副交感神経の活動指標)が増大する傾向(p=0.0716) が確認されました。

ccvHF は、疲労度が高いほど下がる指標。
この数値が増えるということは、身体の回復力・落ち着きが保たれやすい、つまり 疲労が軽くなる可能性がある、と読めます。

「マウスガードを噛みしめると、身体全体で楽になる感覚」を選手たちが経験的に知っているのは、こういう自律神経レベルの変化が背景にあるのかもしれません。

パワーリフターの実践事例

実際、パワーリフター選手やウェイトリフター選手が、試合の場でマウスピースを装着する光景は珍しくありません。
「歯を守る」というのが表向きの理由ですが、この論文の結果と重ねると、噛み合わせを整えることで、力の伝達と自律神経の落ち着きを同時に得ている 可能性が見えてきます。

「食いしばりの科学」って、意外と奥が深いですね!

グラップラー刃牙の末堂も使ってましたね!

咬筋からH反射への力の伝達経路(咬筋の活動→H反射亢進→ヒラメ筋・前脛骨筋の促通→下肢の固定・力の伝達)を示す診察机の書類風ポスター。立川のyell鍼灸治療院・出典蜂須 2021より

今日から使える呼吸と食いしばりの整え方

論文の内容を、今日のトレーニングに活かすためのポイントを3つに絞ります。

① 挙上前の深呼吸で"落ち着ける準備"

10数秒の無呼吸に入る前に、深く息を吸ってお腹をふくらませる(腹圧を上げる)と、体幹が安定して腰への負担も減ります。
高重量で「クラっとする」を減らすには、この準備呼吸の質が大事です!

② 挙上中は食いしばる(ただし顎への負担に注意)

論文の結果からも、食いしばりは全身の力の伝達に貢献してくれます。
高重量を扱う時こそ、しっかり噛みしめて挙げるのが、身体の理にかなっているとのこと。
ただし、顎関節に不調がある方は、無理に強く噛まないほうがいいですね。

③ マウスピースの検討

高重量のパワーリフター的なトレーニングを続けている方は、市販のスポーツマウスピースの導入も1つの選択肢。
歯の保護に加えて、副交感神経の落ち着きが得られる可能性もあります。

顎まわりの疲れや食いしばりの癖が気になる方は、鍼灸で咬筋や側頭筋を緩めるアプローチもあります。
yell鍼灸治療院では、顎まわりの調整も含めて身体全体を診ていくので、ご相談いただければと思います!

まとめ

ここまで読んでくださってありがとうございます!

今回のまとめ

  • デッドの1レップは10数秒の無呼吸→乳酸→交感神経活性化→心拍上昇の連鎖
  • 90%1RM から+5kg で心拍が有意に上がる(p=0.039)
  • カスタムメイドマウスガード(CMG 4mm)で副交感神経指標が増大傾向=疲労軽減の可能性
  • 咬筋→H反射→下肢の促通で、食いしばりが力の伝達を助けている

デッドは、単に「重いものを持ち上げる」動作ではなく、身体全体が一瞬で動員される総合的な運動です!
挙上中に身体で何が起きているかを知っておくと、フォームの意識も自然と変わっていくのではないでしょうか。
呼吸と食いしばりの整え方を意識できるようになっていけば、高重量を扱う時の余裕も少しずつ増えていきそうです!

顎の疲れや食いしばりの癖が気になる方も、身体全体のバランスの一部として、ぜひ yell鍼灸治療院にご相談ください。

yell鍼灸治療院は、あなたの健康と笑顔とハッピーを超応援します!


📚 参考文献

  • 蜂須貢, 大林真幸, 船登雅彦ほか. デッドリフトによるバーベル挙上時の自律神経活動およびそれに対するカスタムメイドマウスガードの影響. 昭和学士会誌. 2021;81(5):453-458.
カテゴリスポーツ
タグ#スポーツ・運動#デッドリフト#マウスピース#立川#筋トレ#自律神経#食いしばり
院長 斉藤宏之

この記事を書いた人

斉藤 宏之

鍼灸師・柔道整復師(国家資格)/2015年から臨床

立川・錦町の完全自費 鍼灸治療院。「またここに来れば大丈夫」と思える場所を目指しています。

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